最近、ひとりぼっちは寂しいせいか、

マスクとか買うついでに、大型ディスカウントストアの片隅にあるペットショップを覗いてしまう。

「犬を飼いたいな」と思ってるからだ。

でも、いつも、どこへ行っても、チワワばっかしだ。

No more Chiwawa!

人類が滅んだら、日本はチワワの王国になるだろう。

 

   *

 

人と会うついでに、その人と映画を見た。

『ムヒカ 世界でいちばん貧しい大統領から日本人へ』

 

 

ムヒカさんというのは、南米ウルグアイの元大統領で、

国連の「持続可能な開発会議」という席上で、みんなが経済発展に的をしぼって意見を出し合っているさなかに

まっこうから「経済発展そのものが幸せではないよ」という熱弁をふるって、

それが話題になって、

日本では絵本にまでなって、50万部のベストセラーになった人。

「世界でいちばん貧しい大統領 来日」として、TVニュースで見た人も多いだろうと思う。

 

 

 

その人の過去と現在、そして日本に来日した印象も踏まえて「日本人に向けたメッセージ」を

ドキュメンタリーの映画として制作し、現在、劇場公開されている。

それを見た。

場所は「シネスイッチ銀座」

銀座の和光の真後ろに、こんな映画館があるだなんて、知らなかった。

 

ムヒカさんは言う。

「人間は成功するために生まれてきたわけではない。幸せになるために生まれてきたんだ。」

「ブランドの服、高価な車を手に入れるために使われるのは金ではなく、時間、だ。その時間は友人や恋人や家族と語らうための幸福な時間を奪うことによって手にした金の代償だ」と。

 

ムヒカさんの主張はシンプルだ。

そして、あくまでも私にとっては目新しい考え方ではない。これまで自分自身が生きて来て、そういう結論にすでに達しているからだ。

 

ただ、ムヒカさんの「言葉」は非常に表現力豊かで、心に刺さるので、

「もう、欲しいものを次々と手に入れるために働くのはやめよう」とか

「金を稼げなかった1日に罪悪感を持つのはやめて、楽しめなかった1日に罪悪感を持とう」などと、

自分自身の決心をうながすには十分すぎる映画だった。

 

ムヒカさんのスピーチは、すでに「説法」だと思った。

キリストやムハンマドのことは詳しく知らないが、

比喩を用いたり、わかりやすく問いかけたりしていて

「苦しみからの解脱」をメインに説いた、釈迦の説法などによく似てる。

これだけ心に刺さる説法をされたら、そりゃ求心力も出るわな。

たぶん、そうやって、「言葉」で大統領になったのだろう。

(若い頃は左翼ゲリラだったそうだ。部屋にチェ・ゲバラの肖像画がある)

 

ただ、

ムヒカさんの話には、ひとつ、矛盾点がある。

矛盾かどうかは、くわしく問答してみないとわからないが、ひとつだけ不可解な点がある。

 

彼は言う。

「我々の闘いは永遠に終わらない。貧しい人を救う闘いは、これからも続く」と。

その「闘い」にもし、いくらかでも勝利したならば、その勝利は「成功」ではないのだろうか?

彼はその成功のために生まれてきたのではないのか、と?

それを彼は幸せに感じてはいないのだろうか、と。

 

人格者で、主張にブレがなく、

人々から尊敬を受けてやまないような人の説法には、

必ず、このような「矛盾」が、ひとつだけ、どうしても出てくる。

私はその矛盾がいつも気になって、質問(問答)してみたくてしかたがない。

 

それは、その人の主張が正しくて(正しそうで)、人格者で、優秀であればあるほど、

矛盾点が際立ってしまう。

 

なぜなら、普通の人の主張だと、矛盾点なんて星の数ほど出てくるので「際立たない」

どうでもいいし、ツッコむ気にもならない。

優れた人物のブレない主張の説法であればあるほど、「ただひとつの矛盾」というものが、

「これが人間という存在の限界なのか」という感じで、際立って見えてしまう。

 

たとえばブッダ(釈迦)。

彼の主張を、般若心境よりさらに短く、20文字以内に要約するならば

「苦しみの根源は固執することにある」となるので、

 

「でも、あなたが困難を乗り越えて説法して回って人々を救おうとする行為は『固執』なのでは?」

という矛盾点だけが際立ってしまう。そして、その回答はまだ得られていない。

 

魅力的で尊敬すべき人物には「矛盾」が、ひとつだけある。

それはこの世と人間がどうしても完璧ではない証なのだろうか?